歯科治療の二大疾患。歯周病。

よく耳にする言葉ですが…実は、いろいろな病気の原因となる怖い病気です。

「歯周病」…オーラルケア用品では歯周病予防をうたった商品も数多く、CMでもよく耳にする言葉ですね。
歯周病は日本人の40歳以上の約8割が感染しているとされる非常に感染力の高い病気です。

歯周病の初期症状は、強い痛みや症状が感じられません。
しかし、歯周病は進行すると歯槽骨と呼ばれる、歯を支えている骨を溶かして、歯を失ってしまう怖い病気です。
また、近年歯周病菌が糖尿病や心臓病、脳卒中や早産など様々な病気の引き金になることがわかってきました。

歯周病とはどんな病気なの?

お口の中を見てみてください。
眼で確認できるのは歯ぐきより上に出ている歯の上部のみですが、歯の半分は歯ぐきの中に埋まっています。
歯は歯ぐきと、歯槽骨と呼ばれる骨、歯槽骨と歯を結び付けている歯根膜に支えられて、硬い食べ物を食べてもぐらつかずに固定されているのです。

歯周病とは、この歯の支えである歯ぐきや歯槽骨、歯根膜の組織を破壊し歯の固定を奪ってしまう病気なのです。

歯周病と全身疾患

歯周病菌が全身疾患に影響するのは、歯周病菌が炎症の原因になることと、歯周病菌が引き金となって、病気を促進させてしまう物質を出させてしまうことが一端にあるようです。

予防の難しいとされているアルツハイマー型の認知症についても、歯周病や残存歯数との因果が発表されています。
噛むということは私たちが思っている以上に体に大きな影響を与えます。
認知症に関しては、「噛む」という刺激が歯根膜から脳に伝わり、アセチルコリンという学習能力に深くかかわる物質を増加させます。
もし、歯周病で噛むことが難しくなる場合には、必然的にアセチルコリンも減少してしまいますね。
さらに、歯周病菌は動脈硬化を促進させる物質を誘発し、血管を細く詰まりやすい状態にして脳血管性の認知症を患いやすい状態にしてしまうのです。

誤嚥性肺炎とは、本来空気の通り道である気管や肺に、誤って食べ物や異物が入ってしまうことが原因で起きる肺炎です。
高齢になると飲み込む機能が衰えたり、免疫力が低下することで、食べ物と一緒に細菌が気管に入ってしまい誤嚥性肺炎を招くことが多くみられます。
この細菌の多くは歯周病菌であるといわれています。
特に脳血管障害をお持ちの高齢の方は注意が必要です。
飲み込む力をなるべく衰えないように口腔機能をトレーニングすることと、歯周病菌のコントロールが効果的です。

狭心症や心筋梗塞の原因は動脈硬化により血液の供給が滞ってしまうことです。
動脈硬化は、乱れた食生活や運動不足、慢性的なストレスなど生活習慣が主な原因とされてきました。
一方、歯周病菌などの刺激が動脈硬化を誘発するプラーク(粥状の脂肪性沈着物)を作りだす引き金となることがわかっています。
プラークが血管に詰まり引きおこる、脳梗塞は、歯周病患者が歯周病でない人に比べて2.8倍脳梗塞になりやすいといわれています。

糖尿病とは、血糖値をコントロールする働きのあるインスリンがうまく働かなくなってしまう病気です。インスリンの働きが弱くなると血液中の血糖値が高くなります。高血糖が続くと血管へのダメージがたまり、糖尿病合併症などの重大な病気を引き起こしてしまいます。
歯周病菌が体に入った場合、全身をめぐる中で、歯周病菌自体は死んでしまうのですが、歯周病菌の死骸が、死んでなお、血糖値を下げるはずのインスリンの働きを邪魔してしまうのです。
歯周病治療を行い改善に努めることで、糖尿病も改善するということが分かっています。
糖尿病と歯周病はお互いに影響しあっています。

妊娠と歯周病

妊娠中は、エストロゲンという女性ホルモンが特定の歯周病菌を増殖させてしまい、妊娠歯周病にかかりやすくなります。
歯周病菌はお母さんの血中から胎盤を通して胎児にまで及び、胎児に感染を及ぼしてしまう可能性があるため、生まれてくる赤ちゃんの早産や胎児発育不全のリスクになるという報告があります。
自分の健康だけでなく、生まれてくる赤ちゃんのためにもお口の健康に気を付けてください。

妊娠中の治療について

妊娠中はホルモンバランスの変化や唾液量の減少、一度にとれる食事量が減少することによる、食事回数の増加、つわりなどによって口腔内が不衛生になりやすいため、むし歯や歯周病を招きやすくなります。
妊娠初期の歯科治療は胎児に影響があるため、応急処置が中心となります。
妊娠後期は、治療も可能ですが、仰向けの姿勢による低血圧にご注意ください。
治療中少しでも不調を感じましたらすぐ医師にお伝えください。

赤ちゃんの歯はお母さんのお腹の中で作られます。
バランスの良い食事をし、赤ちゃんにぜひ丈夫な歯をプレゼントしてあげてください。

歯周病の治療

歯周病菌は、歯垢の中にある悪玉菌の一種です。
歯周病の治療にはまず、バイオフィルムを除去することが大切です。無いおフィルムは粘性のある細菌膜です。
専用の機器でのクリーニング治療を行い、同時にご自宅での正しいブラッシングでバイオフィルムを除去することができます。
抗生物質などの薬を投与する場合もあります。
ぐらついている歯がある場合は、一時的に固定してブラッシングを行っていただき改善を促します。
場合によっては最初に悪くなった歯肉の一部を切り取ることもあります。
但し、炎症が収まっても、歯を支えている歯槽骨そのものが溶け出していますので、ぐらつきが残ってしまう場合があります。ぐらつきが残った場合には最終的な支えを取り付けて固定します。

歯周病が歯槽骨まで達し、歯のぐらつきが酷い場合には外科治療を行います。

GBR法

溶けてなくなってしまった歯槽骨の代わりにセラミック材を使って歯槽骨を再生する方法です。

メインテナンス

歯周病の治療では、進行程度によって、1か月から数か月と幅はありますが、定期的なメインテナンスが必要です。
全身の健康はお口の健康から!歯周病をしっかりと治療し、再発を防ぎましょう。